02) 落とされた影

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いつも思うのだが、どうしてドアベルが鳴らないのだろう? 妙快さんは……忍者? 「お邪魔だったかな?」 ニヤニヤと笑いながら妙快さんは、「失敬」と言いながらカウンター席に腰を下ろした。 ――あの笑い……さっきの見られていた? 顔から火が噴き出しそうだ。 だが、響さんは全然動じていないみたいだ――というより、物凄く不機嫌だ。 「邪魔。で、何の用?」 「ん……」 途端に妙快さんの顔から笑みが消える。いつもの彼らしくない。 煮え切らない態度に、響さんが嫌味を込め「藤宮と喧嘩でもしたのか」と訊いた。 途端に肩を落とし、涙目になる妙快さん。 あらら、もしかしたら本当に? 見た目はタフガイなラガーマン、内は武道に精通する有段者……なのに今日は弱々しいズブ濡れ子猫だ。 「どうしよう、あいつ、金の岩戸に籠っちまった」 あいつとは藤宮弥生(ふじみややよい)ちゃんのことだ。 弥生ちゃんは藤宮稲荷神社の一人娘で、今春、大学卒業と同時に妙快さんと結婚した私の大親友だ。 婿殿となった妙快さんの実家は、阿倍野寺(あべのじ)という由緒あるお寺で、彼はそこの三男坊。本人曰く、安倍晴明の子孫らしい。 そして、彼女も彼も『視える』人だ。
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