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「捨てられる、とは即ち抹消されるということなの」
和香さんが憎々しげに言う。
「奴にとり『駒』は一石二鳥なのだよ」
ん……?
「大岩は『視える』者を目として集め、『使い』『消す』……全てを手中に収めるために」
目……とは見えない部分を補うことなのだろうか?
手中に収めるとは、何をだろう?
だが、ここでハッと気付く。
検事総長という立場なら、『視える』人たちが誰かも知ることができる?
あっ! ――だったら、響さんたちも危険に晒されている?
それはダメだ! 響さんが……いや、そんなことは考えたくない!
おのれ、大岩武志! メラメラと怒りが湧いてきた。
全く、何て人だ!
――いや、人じゃない! 彼こそが悪霊……悪魔だ!
「響さん!」と力強い私の呼び掛けに、彼は驚いたように「ハイ!」と返事をする。
「大丈夫です! 私が響さんを守ります! 私、次の回から嘉月君たちと一緒にお稽古に参ります! あっ、だからその日はお休み頂きます!」
握り拳を目の前に作り、闘志を燃やす私に「はい?」と響さん、板前さん、和香さんはハテナマークを浮かべ、顔を見合わせるが、私の意識は既に花咲館空手道場に飛んでいた。
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