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――それにしてもと、カウンター席にズラリと並んだメンバーをチラ見する。
右から質屋の玄さん、八百春のおかみさん澄子さん、華道の家元花王和香さん、オカマバー『三匹の小悪魔』のリリィさん。
今日もやっぱり……濃い!
和香さんを除き、皆、花水木商店街に店舗を構えるメモリーの常連さんだ。
そして、リリィさんから三つ置き、左端の席で新メニューのプレート作りに勤しみながら、彼らの話を盗み聞きするのは――。
この店『メモリー』唯一の従業員で、無事に正社員となった私、花咲香織、二十二歳。
「――なぁ、昨日の『ゴールド 埋蔵金を探せ』見たか?」
玄さんの言葉に「もちろん!」と澄子さんが頷き、眉を顰めた。
「一柳教授、お気の毒だったわね。心臓が悪かったんですって?」
澄子さん、なぜ私を見る? それは私に答えろと言っているのですか?
いくら教授が勤めていた大学の卒業生だとしても、プライベートまでは……「全く存じ上げません」と言い切る。
すると、「ったく、小娘ってば、使えないわね!」とリリィさんの嫌味が飛んでくる。
「商店街中、その噂で持ち切りっていうのに……放送中に亡くなったのよ!」
どうして私が叱られるのだろう? それは私のせいではない。
「――で、皆がねぇ」と人が変わったように、リリィさんがシナを作り、カウンター奥に視線をやる。
「埋蔵金の呪いだっていうのよぉ、本当だったら……イヤーン、マスター怖ーい」
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