第1章

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まァ、今年だけかと部員はしぶしぶ納得し…今のところ部長の話に乗った。 「で、台本は出来ているんですか?」 部員の一人が尋ねた。 「ああ、30分ぐらいの長さになると思う。 タイトルは『鹿取くんと凍ったかもめ』っていうんだ。」 訳が分からない。 部長によると、幼なじみの『かもめ』という女の子を連れて町の寺にあった謎のスイッチを押した鹿取くんというのが主人公だ。 彼が猫の魔神を復活させたため氷漬けになって亡くなったかもめが転生した異世界に行き…彼女を探すために自らも自害のち転生して魔神を倒す修行をするため成長する物語らしい。 ますます概要が分からない。 (無理矢理流行りの転生入れたな?) (適当な言葉からタイトル作って無理矢理合わせたな。 読者サービスのために、需要に流行り使うのが宿命とか創作も大変だぜ。) 3年は進路と併用しているから作ってる時間無いから仕方ないけど。 (てか、だいたいヒロイン枠の女子いない時点で企画がお釈迦だろ。 2学期の半ばにアニ研入りたがるやつがいるのか?) 不安だらけの部員らがひそひそ話を始める。 文化祭は遠くなかった。 てか、いきなり主人公がヒロインを追って自害するの? それって、泣けるとか思えないから。 魔神は戻って来るまで自分たちの世界に放置? 修行が終わる頃には町は壊滅していると思う。 そもそも修行のシーンが30分ほどで収まるの? 5分で修行が完成するなら、修行なんかしなくていい。 何だか、話が穴だらけで話が軽いのか重いのか分からない…生死が軽いのはファンタジーの宿命だけど。 突っ込みどころ満載の作品作りに巻き込む実験体も不憫だがネタがないこちらも死活問題。 頑張ってもらうしかない。 否定するなら、これ以上のネタを出さねばならないのだ。 納得するネタなんてそうそう出るもんじゃなく。 破天荒な部長の無茶ぶりに付き合わされ…アニ研部員らはギリギリまで秋の学園をかけずり回る羽目になる。
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