第1章

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「こうなりゃ、台本書き換えて俺たちだけでやるしかない!」 言い出しっぺの部長が一番ダメージを受けていた。 「ふふ…女子がいなくても出来る転生系の萌えドラマを作るぜ!」 大学ノートに急いで設定の走り書きを始め…新プロットを立ててシナリオを修正していく。 そのおぞましい執念はもはや人に非ずであった。 人に受け入れられる作品作りは絶対無理だ…かなり目が据わっている。 (だから、音声ドラマじゃ駄目だって!) 疲れ果てた部員らはもはや反論しなかった。 てか、クリエイターの性だな。 どうしても、自作品に愛着を抱く悪い執着の呪い。 ネタはともかく、本気だったんだろうな。 部長は徹夜で台本を書き換え…ドラマの吹き替え音声は男子部員のみで収録された。 ちなみに、効果音などの音響は自作だったらしい。 猫の魔神の中の人のため、近所の野良猫を捕まえて猫の鳴き声をテイク15まで録り直したのはもはや部長にあてられた執念だったが。 そして、文化祭当日。 衝撃のドラマはイメージイラストの掲載とともに、アニ研の部室を彩った。 まず、転生前のヒロインのセリフはカット。 「かもめ、一緒に寺でお祈りしようか。」 鹿取君役は部長である。 カサカサと衣服が擦れる音がヒロイン役の代わり。 健気で内気な少女のイメージらしい。 カッシャアアン! だが、参拝デートのあと魔神がかもめを凍りつかせるシーンは悲鳴も出さずガラスが割れる音で表現する。 「…ミギャアアアッ!」 魔神役の猫の鳴き声が何だか殺気立ってる。 一体、どんな方法で猫にあんな鳴き声を出させたのか考えたくない。 収録前から問題ありまくりだったが…完成品も突っ込みどころが多すぎる。
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