罪の亡失

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高柳真那はじっとしてるのが苦手なタイプだ。 幼い時から時間を有効に使う方法を試行錯誤してきた。 そんなことを考えていることが時間の無駄な気もするが。 本人はいたって真面目だ。 エピソードとしては小学生の時に友達と遊ぶ約束を して三十分遅れてきた友達に一時間説教した。 他に時間が勿体無いと中学生の時、部活 習い事 趣味の読書を用事として一週間詰め込んで翌週体調を 崩して学校を休んだ。 本当に時間を有効に使用したいならあれこれ考えず に無理しないで少し気を楽にした方がいいのかもしれない。 だがそういう客観的に自分のことを考えて行動を 変えることが苦手な彼女にはそんなことはできない お待たせー 本当に待ったわよ ごめんごめん 真那が待つの嫌いなの知ってたのに 本当に長い付き合いなんだから頼むわよ ここでいつものように遅れて来た友人にお小言を 言おうとしたその時、 ねぇあれ 友人が指をさす ん、なによ? !? 友人の指先の方向に目を向けると二十代くらいの 男性が倒れていた。 他の通行人は人が倒れ込んでいるのに目もくれず そそくさと男性の前を横切る。 その光景に真那は不思議に思う なんで誰も声かけてあげないのよ 酔っ払いが寝ているだけだと思ってるの? それとも面倒ごとに巻き込まれたくないから? そう真那は友人に問う。 え?なんでだろうね 二つとも間違いじゃないかもしれないけど 私が思うにみんな自分と関係ないことで時間を 使いたくないんじゃないかな? みんな忙しそうにしてるし。自分以外の誰かが動い てくれるだろうって人任せにしてるんだと思う。 そうなの? そうだと思うよ。真那もよく時間は大切だって いうでしょ? あ、あたしは困ってる人を見過ごしたりはしない 時間ってのはこういう時に使うのが正しい使い方 でしょ?正しいことに使うのは決して無駄じゃないわ。 あたし声かけて来る あ、ちょっと真那待って 友達の制止も効果なく真那は 男性に駆け寄った。 あの、大丈夫ですか? 寝てるだけですか?
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