罪の亡失

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蔵山 茂。その名前を自分の名前だと聞かされた時 思った。 蔵山茂は僕であって僕でない。蔵山茂と 同姓同名の人は他にもいると思う。その人は間違いなく蔵山茂だ。でも僕も蔵山茂だ。どっちが本物? どっちも本物なんだ。名前なんて記号。名前がないと不便だから一人一人に与えられた。僕は、蔵山茂だ。でも誰だ?蔵山茂とは僕を呼ぶ時に困らないための言葉でしかない。僕は記憶がない。家族も。 みんなが僕のことを蔵山茂と呼ぶ。でも僕は蔵山茂ではない。今までの僕と今の僕とでは全くの別人。 赤の他人なんだ。名前が同じだけ。でも蔵山茂とは彼を呼ぶ時の名前。僕じゃない。 僕は誰? ひとごろし え? 蔵山茂(?) はどこからか聞こえてきた声に反応した。 こっち 蔵山茂は声のする方を見た ? そこには自分がいた 君は、僕? そうだよ。ちなみにここは君の精神世界。君は さっきまでずっと自問自答を続けていた。だから答えを教えてあげた。君はひとごろしだよ。 僕は殺してない。 ごめんごめん。 正確には僕が殺った。 誰を?なんで? その前に君の事について教えておこう。 え?それはどうゆうことだ? 君は僕が人を殺すときに受けた精神的なダメージにより無意識化で作り上げたもう一つの人格。僕は 人を殺した時に大変心が傷ついた。それが嫌でもう一人の自分を作り出し、痛みから逃げた。 君に全て丸投げしたんだ。 要するに君は僕の人格の一つに過ぎない。君という人間は存在すらあやふやなものなんだ。 ふざけるな。僕は一人の人間だ! でも君は自分のことがわかってなかったろ? そう言われて黙り込む 僕が話しかけるまでずっと自分がなんなのか模索していた。 でもまさか君が自分のことを知った時そんな反応をするとは。なるべく感情がない人格を作り出していたと思ったのに。感情がむき出しだね。 別に、そんな。 ククッ 今更取り繕ったて無駄だよ。僕は僕のオリジナルだ 。君の感情を読み取る事くらいできる。ちなみに君じゃ僕の考えは分からない。 あと、現実では今僕のオリジナルの人格は眠っている。 精神的ダメージが大きくてね。しばらくは眠ったままだ。だからその身体はしばらく君に貸してあげるよ。 お前、僕の感情が読めるんだよな? なら僕が君にに向けている感情がわかるだろ? 憐れみ
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