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特待生という立場で授業料をほとんど払わず大学に通っていた私は、周りの生徒からいつも冷たい目で見られていた。そもそも女性が大学なんて、考えられなかったのだ。校内には私以外の女性は事務として働く数名と、掃除を担当する人たちだけだった。だから妙齢の女性、となると私しかいなくて、最初の頃は、それはもう大変だった。
男ばかりの環境に女が一人いるのだ。興味本位で声をかけてくる人もいれば、逆に疎ましい目を向けてくる人もいた。まあそんなの正直どっちでもよくて、私はやるべきことをやるだけだった。ここまでくるのにどれほど努力したと思っているんだ。あんたたちみたいに、家の名前と金の力でのうのうとやってきたのとは違うんだ。私は独学でラテン語も古典ギリシャ語も英語もフランス語も、全部身につけた。哲学も、文学も、数学だって。血反吐を吐く思いで本にかじりついた。それは結局、名誉とか誇りとかそういうものではなく、ただ後悔と懺悔の気持ちだけのためだったのだ。
「アンナさん! おかえりなさい、会いたかったわ!」
「レイラ。そんなに走ったら転ぶわよ」
「大丈夫、ああ、本当にアンナさんなのね。嬉しい!」
「大袈裟ね」
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