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彼はもうずっと森の中を歩き続けていた。
すらりと伸びた瑞々しい肢体。
少年というには成長しており、大人というには未完成の身体。
しかしその足元は草木で擦れぼろぼろだった。
腕にもじんわりと血が滲んでいる。
「ここ、どこ……?」
出口を求めて森の中を彷徨うも、一向に外に出られる気配は見当たらない。
それどころかますます奥へと入っているように思えた。
「いい加減、疲れたよ……」
先の見えない旅路に気力の萎えてきた彼は、木の根元に座り込んだ。
すると一匹の虫が飛んできて、彼の剥き出しの腕にとまった。
蚊をかなり巨大化したような虫だった。
チクリと針が刺さる感触がした。
見ると口元からはのこぎりのような巨大な針が伸びていた。
それが腕に刺さっていたのだ。
だけど叩き潰すのも気味が悪く、彼はなされるがままじっと耐えていた。
やがて気が済んだのか、その虫は何処ぞへと飛び立っていった。
その虫がとまっていた跡はうっすらと膨らんでおり、しかしそれは時間の経過と共に吸収されて消えてなくなった。
その後も彼は木の根元で休息していた。
そして、しばしの時を経たころだろうか。
「あれ……?」
彼は身体の異変に気が付いた。
何となく頭がぼおっとする。
身体が熱っぽい。
やがて力が入らなくなった身体は、ぐらりと傾き崩れ落ちた。
美しい銀の髪が、木の葉や土の上に散らばる。
薄ら氷の瞳は、不安と――微かな期待に揺れていた。
――ガサゴソ、ガサゴソ
何かが近付いてくる音がする。
何だろうと疑問に思って重い頭を持ち上げて、視界には何か茶色いものが数個映り込んだ。
――これは、甲虫?
それらの虫は彼に近付いたかと思うと、彼の身体によじ登ってくる。
もともとボロボロだった彼の服は鋭い顎で噛み切られ、彼の愛らしい股間は外気に剥き出しにされた。
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