プロローグ

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「かつてこの国には、銃を持った竜騎兵(ドラグーン)と、それに引けを取らぬ有翼騎兵(フサリア)がいた。ドラグーンは組織化された国の兵であったが、フサリアは違った。数百年に一度の割合で生まれる羽毛を持つ竜と対をなす人の子とのひと番いで、真に騎兵でありながら、ドラグーンにも勝る強さを備えていたという……」  リュートの音色に乗せて囁くように語る吟遊詩人の声音を一言も聴き逃すまいとするように、広場の樹下に車座になって座った子供たちは、その低音に息さえ殺して聴き入っていた。 「兵力が増す事から、その誕生を待ち望んでいた国王たちだったが、ある時代の国王は、フサリアを亡き者にしようと考えていた」 「えっ」 「何で!」  話に引き込まれていた子供たちの何人かが、思わず声を上げる。  詩人は微かに笑ったようだった。一拍おいて、再び語り始める。 「己の欲望のままに悪政を強いた国王は、その一騎当千の強さを恐れ、フサリアが生まれたらすぐに知らせるようにと国中に触れを出した。やがて、ひと番いは生まれる。しかし賢者たる竜は国王の企みを見抜き、ひと番いを竜の巣の中に隠して育てた。竜の名をナージャ、対の子をアレンといった……」
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