10人が本棚に入れています
本棚に追加
どこにそんなに言葉をしまっていたのかと思うほど、青年はとつぜん明瞭に話した。
「この鏡は、術士どうし、二人で見ないと作動しない。お互いに、お互いの気脈が見えている必要があるからだ」
「……つまり?」
「分からないならいい。分かるようになるまでそこでぼーっとしてろ」
酷い言い草だった。オルシアは暫く頑張って考えたが、結局分からなかったので、もう一度青年の顔を見た。青年はオルシアによくよく聞こえるように大きなため息をついてから、言った。
「――きみは魔術士だ。いや、まだそうではないけど、少なくともその素質がある」
それはオルシアにとって、酷く衝撃的な天啓だった。
「だって、ぼく……なにもできないんです。いままで、べつに花を咲かせたりとか、誰かを救ったりしたことなんて……」
町にいる魔術士たちの行動を思い出し、そう告げる。
「習いもしないのに、花を咲かせたり湯を沸かしたり命を救ったりする者なんていないよ。十年以上の、長らくの月日を経て、気脈に愛された子供はなんとか魔術士になれるんだ」
「……じゃあ、その、僕は……」
「そう。あまり何度も言ってやるつもりはないけど、君はおれたちの同胞だ」
まさに、天啓だった。そんなこと、村の誰も教えてくれなかった。
「まあ、嬉しくないかもね」
最初のコメントを投稿しよう!