001 出会い

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「そんなことはありません!」 「そう?」  青年は薄い笑顔を張り付かせ、オルシアのほうを見た。どうしてかオルシアには青年が傷ついているように見えたが、そんなことには構っていられなかった。 「どうして、僕には魔術の才能があるのですか?」 「さあ。知らないな。誰も知らないんじゃないのか、そんなこと。おれもどうしておれが気脈に愛されているのかしらない」 「愛されているのですか」 「そうだよ。気脈にな。おれでいえば、この兎と雨雲に」  青年の傍にはいつのまにかまた、巨大な兎がたたずんでいる。ぎょろり、と目玉がぐりぐりに動くのが、恐ろしかった。小さければ可愛い兎なのだろうが、こうも大きいとさすがに怖いと思う。 「僕も愛されているんですか?」 「そうだ、いま見せたろう。この鏡たち」 「鏡?」 「見ろ」  もう一度ぐいと、大木と化した鏡のまえに立たせられる。じっと覗き込めば、やはり、巨大な兎と雨雲、そして無数の鏡の破片が見えた。 「……この鏡が、僕のキミャク?」 「そうだ。無機物が転がるのは、すこし珍しいな」 「それって悪いこと?」 「いや、そんなことはない。別に良いことでもないけど」     
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