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青年はオルシアの言葉なんて聞いていないというふうに、ゆったりと石をいくつか拾い、布袋に入れていた。それを宙に放れば、また、兎――ヴェンニが、ぱくんと食べる。不思議なコンビネーションだった。
やがて、青年は唐突に、思い出したという風に呟いた。
「だめだよ」
それは単調で分かりやすい、拒絶の言葉だった。
今までと、何も変わらない。何も叶わない。慣れている、否定されることには。
――しかし。
「もう少しよく考えなさい」
ぴしゃり、と鼻先で進路が閉ざされるような感覚。それは、生まれてから十年以上繰り返されてきたことの、なぞり書きに他ならなかった。
オルシアと青年との出会いは、そんな風にして幕を閉じた。
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