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オルシアは(もはやこれは、生まれたときから、と言ってもいいほど昔から)ずっとずっと排除されてきた。
村のなかにとうていオルシアの居場所なんてものはなかったし、父親の愛情といったものも感じたことはなかった。というよりも、あの人はおそらく本当の父親というやつじゃないのだろう。そういった意味では、オルシアは「父」に申し訳なく思ってもいた。自分と血が繋がってすらいない、ただ少しだけ愛していた女の子供であるというだけの関係の自分――しかも、可愛げがなくて、村中の人に嫌われている自分の面倒を、親という役割を押し当てられて、こなさなければならなかった人。父親がオルシアに親愛の情を持っていなくとも、深い義務感と責任感をもってして彼を育てたように、オルシア自身も、父親にたいして情愛のひとかけらもなくとも、ただ感謝の思いと申し訳なさがあった。よい感情ではない。町中のだれも、オルシアに対してよい感情は抱いていなかった。オルシア自身もそれは同じで、町中のだれも、オルシアは好きではなかった。だれひとりとして。その、好きではない人たちが、いまオルシアをよくない瞳で見ている。
とうてい耐えられない。
オルシアは生まれて初めて、そう思った。
これ以上この場所で生きていくことは、とうてい耐えられない。
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