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「この町の地質は珍しいな」
言って、青年は次に足元を蹴った。いくつかの黒石がパリンと二つに割れて、砕け散る。この石は研摩で成型できる程度にはやわらかいが、蹴って割れるほど脆くはない。驚いて、オルシアは彼の無表情を見上げた。
「あなた、だれ?」
「魔術士。何度言わせる?」
「どうしてこんなことが出来るの?」
「あのね、この回答は三度目だってことを肝に銘じて欲しいんだけど――魔術士だからだろうね、このおれが」
彼はうんざりしたようにそう答えた。しかしオルシアは「うんざり」されるのなんて慣れっこだったし、明確に邪険にされない分だけ、むしろあたたかい対応のように思えた。
「むかし、村の中央には、火山があったって。この石たちは、すべてその溶岩だとか」
「ああ、そうだった。思い出した――子供というのは聞いてもいないことをぺらぺら喋るんだったな」
「あなた年はいくつ?」
「なんだそれ。久しぶりにされた質問だな。君には学がないと見える、頭は悪くないだろうに」
「どうして僕の頭のことが分かるの?」
「質問ばかり。礼儀すらないのか?」
青年はそう言って、また投げやりに石を蹴った。再び、パリンと黒い石が割れる。
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