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6年後ーー。
駅前のスクランブル交差点は週末とあって、人通りが激しかった。よくあるコーヒーチェーン店のカウンター席、通りが一望できる窓際で、友人たちはさっきからああでもない、こうでもないと言い合っている。
「いま来た右の子は?」
「40点。脚が太い」
「じゃあ、その後ろの子は? ほら、あの子。マジかわいくね?」
「後ろって、どいつ?」
「緑のチェック。髪が肩までのウェーブの子」
「ああ。んー、60点?」
「マジでー? 厳しくねー?」
隆彰はフラペチーノのストローの先をガシガシと噛みながら、手元のスマホを弄っていた。派手な効果音が流れ、ゲームオーバーの文字が出る。
「つまんねー」
隆彰は咥えていたストローをぽいっと、カップに放り投げた。スマホをスラックスのポケットにしまい、まだ中身が残っているカップごと、ゴミ箱に捨てる。
「俺帰るわ」
「えっ! おい待てよ」
それまで、街を行き交う女の子たちの点数をつけるという悪趣味な遊びをしていた友人のひとりが、隆彰の言葉に慌てた。
「隆彰に帰られちゃ困るんだよ」
「なんで」
隆彰は首にマフラーを巻くと、コートと学生鞄を手に振り向いた。
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