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 優一はどうしていいかわからないといったようすで、誰かに助けを求めるかのようにきょろきょろとあたりを見回すと、やがておずおずとベッドに近づいてきた。サイドテーブルにマグカップを置くと、ベッドの端に申し訳程度にちょこんと腰を下ろす。 「そうじゃなくて、こっち」  隆彰はぐいと優一の腕を引いた。自分の脚の間に優一を座らせると、背後から抱え込むように腕を回した。  優一はカチンコチンに固まっている。隆彰の目の前に晒された首筋は真っ赤で、いかにもキスしてくださいと言わんばかりのうなじに、隆彰はちゅっと口づけた。 「ひゃ!」  隆彰の腕の中で優一が小さく飛び跳ねた。クスクス笑い声を漏らす隆彰を、情けなさそうな顔をして見る。隆彰はかまわず、ぎゅうぎゅうと優一を抱きしめた。 「・・・・・・なあ。ずっと好きだっていってたやつはもういいの」  優一の後頭部にぽすっと顔を埋め、どうしても気になっていたことを訊ねる。口調はいつもと変わらないはずだが、本当は緊張で心臓が早鐘を打っていた。いまさら違うと言われたらどうしよう。  甘える仕草に、優一は首を回して隆彰のほうを見ると、うん、とうなずいた。隆彰は、ふーん・・・・・・と呟いた。そう言われても、心からはいそうですかなんて納得できない。すこしだけ面白くなくて、しばらくの間、そうしてぐりぐりと優一の頭に顔を押しつけていたが、やがて思い出したようにぱっと顔を上げた。 「そうだ。なあ、財布貸して。なんか梓真が優一に会ったら、財布の中を見ろって言ってたんだよな」 「えっ!」
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