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 思わず優一の腕を取り、まじまじとその顔を眺める。 「そうかー、あれかー!」  納得したようにうんうんと頷く隆彰に、優一は弱り切ったような笑みを浮かべた。 「そう。梓真に無理矢理着せられたドレスを誰にも見せられなくて、困っていたところを助けてくれたのがきみだった・・・・・・」  優一が自分を嘲笑うかのように、小さく微笑んだ。 「・・・・・・あのころ、僕は家の中で浮いた存在で、半分血がつながった弟にも嫌われていて・・・・・・」  いや、それは違う。あれは単に梓真が素直じゃないせいだと隆彰は知っていたが、説明するとなんだか面白くないことになりそうなので、口には出さない。 「どこにも居場所がなかった僕に、きみは初めて優しくしてくれたんだ・・・・・・」  そのときのことを思い出し、懐かしそうな顔をする優一に、隆彰はぐっと言葉につまった。あれは優一からそんなふうに言ってもらえるものじゃない。苦い思いが胸に広がる。 「え、じゃあ、優一が家を出されたのって・・・・・・」  優一がかすかに微笑んだ。どうしてか、隆彰のことが載った切り抜きを大切にとっていたのを見つかったのだ(おそらく梓真のせいだろう)。なにも答えない優一の表情が、すべての答えだった。  破られた紙片を、優一はどんな気持ちで拾い集め、修復したのだろう。そんな理不尽な理由で家族から切り捨てられたのだ。まだ、高校生かそこらにすぎなかったのに。  痛みで、胸がつまった。  真実を知られたら嫌われてしまうと、次に隆彰から言われるであろう言葉を、耐えるようにじっと待っている優一に、隆彰はあふれるような愛しさでいっぱいになった。
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