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「だってさ、ふつうの女の子だったら、どうせすぐに隆彰にまいっちゃって、賭けになんないじゃん。でも、さすがの隆彰でも、男は初めてでしょ? それとも自信がない?」 「話になるか!」  くるりと踵を返した隆彰の背後から、ふーん、やっぱ自信がないんだ・・・・・・、という梓真の声が聞こえてきた。どうしてもケンカを売りたいらしい。その手にのるか。 「隆彰さ、エアーの時計、手に入れそびれたって言ってたよね。限定5本しか作られていなくて、日本にはそのうち1本しか入ってこなかったやつ。あれ、賭けるって言ったらどうする?」  隆彰はぴたりと足を止めた。 「あれさ、プレミアとかついて、オークションとかで手に入れるのは難しいだろうね。隆彰がいらないなら、売っちゃおうかなあ」 「・・・・・・梓真どういうつもりだ」 「べつにどういうつもりでもないよ。ただ面白くしたいだけ」  ふたりのうちどちらか一方につくこともできずに、友人たちはおろおろと隆彰たちの顔を見比べている。 「もちろん、寝ろとまでは言わないよ。さすがにねえ、難しいもんねえ」  梓真は、そうだなあ・・・・・・、と考える素振りを見せた。 「相手に好きって言わせて、キスするだけでいいや。それで隆彰の勝ち。もちろん、ちゃんと証拠はもらうけどね」  こいつの口車に乗せられるのは気が進まないが、梓真の言うことはもっともだった。この機会を逃したら、エアーの限定ウォッチは二度と手に入れることは叶わないだろう。 「・・・・・・それにしても、こっちに条件が不利だろう。男同士なんて、いくらなんでも条件が悪すぎる」
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