1/7
前へ
/63ページ
次へ

「なあ、おい待てよ! そこの・・・・・・メガネ!」  男は隆彰の言葉に足を止めると、きょろきょろとあたりを見回した。呼び止められたのが自分かと訝しむように、おそるおそる振り返ったその目が隆彰の姿を捉えて、驚いたように見開かれる。  その表情に、隆彰はわずかに違和感を覚えた。一瞬、知り合いか? と思うが、すぐに気のせいかと思い直す。  人混みの多さは狂気じみていた。どこからこんなに人が沸いてくるのかと、自分のことは棚に上げて、隆彰はうんざりした。 「・・・・・・あの、なにか?」  メガネの男は気弱そうな視線を、おどおどと隆彰に向けた。  ・・・・・・ああ、くそ。どう見ても男だ。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

376人が本棚に入れています
本棚に追加