方向音痴

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「もしもし? 悪いんだけど今すぐここまで来てくれない?」 「は? 場所も言わずに来いとはなんだ。どこにいんだよ」 友人からの電話。なんか少し嫌な予感がしたが、それにちゃんと対応してやる。 「実は、ここがどこだか自分でも分からないの。こんな道、記憶にないわ」 嫌な予感的中だ。 「じゃあ、俺に分かるわけねーだろ。いつになったらその方向音痴なおるんだ? 自覚あるんなら、一人でほっつき歩くな」 「仕方ないじゃない。一人で散歩したいときだってあるのよ」 悪びれる様子もなく言い返される。その物言いに腹が立つ。 「テメェがどこで迷子になろうが、こっちは知ったこっちゃねぇんだよ。なのに毎度毎度迷子になる度に電話かけてきやがって」 「あら、そう言っていつも迎えに来てくれるのはどこの誰?」 ぐうの音も出ない。が、これもいつものことだ。口ではこいつに敵わない。 「ったく。今から行くからそこで待ってろ。動くんじゃねーぞ」 「分かってる。早くお願いね」 プツリと切れる電話にタメ息が出る。 今日はどこにいるんだか。
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