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「すみません、疲れてるの無理して付き合わせちゃいましたか?」
「え、ううん。違うの。ごめんね、ぼーっとしてて」
映画を見終わって車に戻ると鉄平に謝られた。理世も見たかった映画のはずなのに、入り込めなくてどこか上の空のまま眺めていた。せっかく観たのに、内容をほとんど覚えていない。
「早めに帰りましょうか」
気遣ってくれている筈の言葉に、心が沈み込む。
帰ったら、マンションの前には寺岡がいるかもしれない。そう思うと、不安に心臓の音は早くなる。
「理世さん、ご飯食べれそうですか? なにか食べて帰ってもいいし、疲れたならこのまま家まで送りますけど」
「うんー……」
全く答えになってない答えを返してきた理世に鉄平は少し困ったように息をつく。
「本当に具合、悪くないですか?」
「大丈夫……」
「大丈夫にみえないから聞いてるんですけど」
「ごめんね。本当に、大丈夫」
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