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「鉄平はさ、なんで別れたの? 彼女と」
この間、聞きそびれてしまった事を問いかけながら、理世は検査番号順に並べたたスライドガラスをまとめて引き出しに入れる。
鉄平は、少なくとも理世が知って居た頃は、同い年の看護科の子と付き合っていたはずだった。
「理世さんと一緒です」
一緒、と言われて一瞬ドキリとしたけれど、すぐに遠距離自然消滅の方だと気づいた。
「向こうが地元で就職したから遠距離で、仕事忙しかったし、こっちも実習だし、国試もあったし、あんまり会えないでいたらそのまま」
「……そっか」
理世もせめてそういう終わり方が良かった。そしたら、あんなに苦しくなかったのに。寺岡に、入り込まれるなんて事もきっと無かったのに。唇を噛んだ理世は、蛍光灯の灯りが陰った事で、初めて鉄平がすぐ側まで来ていたことに気が付いた。そして、その時には既に鉄平の手が棚に添えられて、理世の逃げ場を奪っていた。
背中に鉄平の体温を感じる程に近く。理世の頭の上から鉄平の声が降ってくる。
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