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「俺、昔 理世さんに告ったじゃないですか?」
「……うん」
そうそう忘れられる事じゃない。鉄平にそれを言われた時、理世の中には既に藤本が居た。結果として、鉄平をふってすぐに藤本と付き合った形になった。
そんな気まずい状態なのに、鉄平は理世とも藤本とも距離を置いたりせずに、それまでと変わらず、素直な後輩のままだった。そんな鉄平だから、尚のこと、一番可愛いと思う後輩だった。
「あの時、言いましたよね。ずっと好きだと思うって」
「……」
「何で嘘つくんですか。別れたの、藤本先輩の浮気が原因なのに」
理世はハッと息を呑んだ。
「すみません。知ってました。追いコンに藤本先輩来てたんで。裕也さんは、来れなかったので知らなかったはずですけど」
棚に添えられていた鉄平の手は、理世の肩に場所を移して、理世の身体を抱き締める。
「あんなのにつけ込まれる程、辛かったんですか? 俺なら……俺なら、理世さんの事泣かせたりしないのに」
答えられない理世を強く抱き竦めて、鉄平は理世の耳に魔法の言葉を注ぎ込む。
「……やっぱり、今でも好きです」
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