141人が本棚に入れています
本棚に追加
止めざるを得なかった。背後から抱きしめられたから。
「……ら岡……先生?」
どうして今ここに?
疑問と、不安が一気に沸き起こってくる。
だけど、理世の身体を抱くその腕にある腕時計は、寺岡の物に間違いなかった。何より、理世の本能が寺岡だと告げていた。
理世の耳元に、少し疲れた様な吐息が触れる。
「お前とこうしてると、安心する」
それは、少し疲れが滲んだ、寂しそうな声だった。寺岡は、理世の髪に顔を埋めて、首筋に口付けを落とす。
「どうして居るの……?」
今日は土曜日だ。居るはずがないのに。
「理世、今夜行くから」
理世の問いには答えないまま耳元で低く囁いて、理世の耳朶を甘噛みして、寺岡の腕はするりと理世を解放した。
解放されても、理世はしばらく動く事が出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!