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昼間の熱気を海からの風と波の音が攫っていく。自動販売機で買ったコーラの炭酸をものともせずに喉を鳴らして飲む鉄平を見て、理世は小さく笑った。
「こんな遠くまで来なくてもいいのに」
「良いんです。連れ去りたかったから。まぁ、最終入館に間に合わないとか超かっこ悪いですけど」
少し拗ねた様に言って、鉄平は視線を海に向けた。水族館の最終入館時間だった18時にぎりぎり間に合わなかったから、車を水族館の駐車場に止めたまま防波堤に座って海を眺めていた。
「鉄平」
そう声をかけて、理世は鉄平の肩に頭を預けた。
「ありがとう」
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