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大学時代、理世の部活は6年制の医学科と一緒だった。よくは判らないけれど、医学部は医学部でその他の学部とは別扱いだった。
理世が卒業したのは、医学科ではなく、保健衛生学科で4年制。臨床検査技師の国家試験の受験資格が得られる、検査技術学を専攻した。
一方、鉄平は紛れもなく6年制の医学科。一つ年下の鉄平だけど、卒業したのは去年で、今はまだ研修医のはずだ。保村研に居ると言っていたから、もしかしたら院に進んだのかもしれない。この辺のシステムはやたらと複雑で、病院で働いている理世にはよく分からない。
とにかく。問題はそんな事じゃない。
見られてしまった。寺岡とキスしているところを。
理世が知っている鉄平は、理世が卒業した時-つまり、21歳で止まっている。ひょろっと背は高いけれど、人懐っこくて、まだちょっと童顔で、立ったら大きいけれど、なんだか可愛い忠犬みたいな後輩だったのに。
人懐っこさを残しながらも、25歳の鉄平は、可愛い忠犬から一人前の男の人になったように感じられた。
『エロ可愛い声』
こんな事、言うイメージ無かったのに。
軽蔑、されたかな……。胸がチクリと痛む。理世自身も、以前なら断固反対だった。不倫なんて。
ため息混じり帰り支度をして、エレベーターに乗ろうと病理部の前の廊下に出るなり声をかけられた。
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