今 顔を上げたら、きっと。

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 本当は、違う。  本当の理由は、藤本の浮気だった。  単に言いたくなかったのだ。浮気をされたなんて事、信頼できる友人はともかく、職場の人達に知られたくなかった。  それに小林は藤本のことを知っているのだ。知人の浮気だのなんだのなんて話、聞きたくないだろうと思ったから。 「そっか。じゃあ、理世 今フリーなわけ?」 「……そう、ですね」  小林の問いにちょっと気まずい気分で答えながら、鉄平の表情を伺うと、昼間の事など気にも留めていないかのように、ニコッと笑われた。 「私はともかく。裕也さんどうなってるんですか?」 「俺、居ないよ。冗談抜きで、顕微鏡が恋人。鉄平は?」 「俺も、居ませんよ」 「なんだよ。寂しいメンバーだな。おい」 「すみません」  理世と鉄平は何となく声を揃えて謝った。
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