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「住民」「咎人」「咎人殺し」
ギルティワールド、この世界はそういう名前らしい。
そんな知識を頭の片隅に置きながらキリコは今日も働いていた。
キリコは街唯一の書店で働いており、朝から晩まで暇そうに店番をしていた。
「おつり八十円です」
右手に太陽の紋をつけた男性が一冊の漫画本を買っていく。
夕方の店じまいを前にして、この日の客は彼ひとりだった。
この店……いや、この街は指摘すればするほど不可思議である。
本屋をはじめ食料品や雑貨も同様に品の種類に応じて一店舗でしか扱っていない。しかも商品は朝になれば勝手に湧いて出てくるので、キリコら店員はそれを言われたとおりに売るだけである。
毎日が停滞しているようで毎日微妙に違う日々をキリコら「住民」は送っていた。
「住民」はそれを当然としか思っておらず誰も疑問に思わない。
疑問に思うのは決まって「咎人」である。
「ひぃ!」
「どうせテメーらは明日になったら■■■■■ンだ、殺したってかまわねえよな」
店じまいをしたキリコは、帰り道に老婆に暴行を加える一人の男を見かけた。
彼も右手に太陽の紋をつけている。この紋が「咎人」の証だ。
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