3. 首輪とマタタビ

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「限界か?」 「ん、ん……、も、むり……、やだ……」 「そうか。じゃあ頭を洗って最後にしよう」  そう言われ、全身の泡を流された後は手枷を下ろされた。しかしネロは力無くタイルの床に座り込み、立ち上がる気力もない。されるがままに頭に泡を付けられて、揺すぶられるまま、目を閉じていた。  シャワールームでの責めは毎日続いた。流石に慣れて、抵抗の意思もなくしたネロは大人しく、全てが終わるまで嬌声を上げ続ける。終わった後は丁寧に身体を拭かれ、頭を乾かしてもらってバスローブを与えられた。またベッドまで戻り、手足と首を繋がれる。  ルカがベッドサイドの水をネロの目の前でコップに注ぎ、手渡す。素直に乾いた喉を潤すと、褒められるように頭を撫でられた。こういう触れ方が、ネロの心を乱すのだ。手枷も、足枷も、首輪までつけられて縛られている。それなのに扱いはひたすらに甘い。一人でいる時に苦しいことなど、一つも無い。  もう一つネロの心を乱しているのは、ルカが身体を要求してこないこと。  もちろんシャワーの時は何度ネロが「変態」と悪態を吐くか数え切れたものではないが、もっと直接的なことをされたことはなかった。無防備にベッドに転がっている時でさえ、ルカは隣で、ネロの肢体を眺めるだけ。  監禁はされているが、この男の真意が分からない。  ネロはルカに背を向けて布団に潜りながら、「あのさ」とぽつりと呟いた。 「何が目的か、って教えてくれないの」  以前に、レイプだと聞いたような気もするが、それならばまだルカの目的は達成されていない。達成する気も無いように感じる。  ルカはゆっくりと身体をベッドに乗せ、ネロの背後から覆い被さるようにしてこめかみにキスを落とした。その動作があまりにも甘く、まるで映画のワンシーンのようで、不思議とネロに不快感を与えなかった。 「お前をここから逃がさないこと。……それが目的だ」 「……ふん。じゃあ、俺は一生このままなわけ?」 「遠くには行かない、呼べば必ずすぐに戻ってくると誓えるなら、解放してやってもいい。だが、お前は猫だからな」  洗ったばかりの滑らかな黒髪を指で掬われる。そこにもキスを落とされて、リップ音が部屋に響いた。
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