3. 首輪とマタタビ

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 ネロは身体の向きを変え、真正面からルカの瞳を睨み付ける。 「俺を支配して何がしたいの? 従順な家猫にして、完全に屈服させてから抱き潰すつもり? お生憎さま、俺は誰にも縛られたくない。どこにだって行くし、誰にだって尻尾振って、一人で生きていくんだから……っ」  言い放った瞬間、その唇はルカのそれに塞がれた。  乾燥した唇に食まれて、ネロは一瞬思考を飛ばす。次には下唇を甘く噛まれ、ぞくりと震える背筋を誤魔化せなかった。官能的な触れ方を熟知した、大人の狡い唇。 「お前をマネキンにするつもりはない。ただ、傍に置いていたい……」  熱を込めた言葉は、まるで口説いているようで。  ネロは顔を背けてそれから逃げた。倒錯的な状況と言葉。これ以上おかしくなるのは嫌だった。 「あんたは手順を間違えてる……」 「そんなことは分かっているさ。だが、他にどうしようもない。もう時間がなかったんだ」 「時間……?」 「サクラーティが本腰を入れてお前を探している」  唐突に落とされた爆弾に、ネロは息を呑んだ。 「だからもう少しここにいろ。ミラノには帰りたくないのだろう?」 「…………」  悔しさに、顔を歪めながら。  ネロは頷いた。  ここにいることと、ミラノに帰ること。  比べるまでもないほどに、ネロは後者を恐れていた。
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