4. 雨に濡れる

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「あんたの考えてることなんか全然分からない! レイプが目的ならさっさと犯せばいいだろ、それとも俺を人質にするつもり? 俺がサクラーティの隠し子だって、どうせもう知ってるんだろ……!」  子どものように癇癪を起して怒鳴るネロの頭に指を伸ばせば、「触るな!」と拒まれる。それでもルカの機嫌は損なわれなかった。 「ああ、知っているとも」  平然とそう言い放ち、ベッドの縁に腰かける。 「……ミラノに行ってきたんだ。お前の親父に会いにな」  ネロの瞳が一瞬、絶望に見開かれた。  それはすぐに細められ、綺麗な顔がくしゃりと歪む。 「俺をミラノに帰す手筈でも整えて来た……? 報酬は? ――祖父さんの遺産……?」  強気な瞳が、揺らぐ。そこにじわりと涙が滲んだ。  違う、とルカは言った。しかし今のネロに、その言葉は届かない。ぱっとルカから目を背けると、ますます丸く縮こまって、布団の中に隠れてしまう。小さく震えているようだ。ルカが肩のあたりに触れると、絞り出すような声で、触るな、と言う。 「俺は祖父さんの遺産なんか知らない……知らない……」 「落ち着け。聞け、ネロ」 「俺は何も知らない……!」  完全に殻に籠ってしまったネロに、ルカは溜め息を吐いた。トラウマか何かを抉ってしまったか。元気になったかと思えばこれだ、感情の起伏が激しい、気まぐれに過ぎる。 それに振り回されるのを、楽しく思う。 「……で、シャワーはどうする?」  丸い布団に向かって声をかけてみた。  長い長い、沈黙の後。 「…………浴びる」  ネロはもぞもぞと出てきた。
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