384人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたの考えてることなんか全然分からない! レイプが目的ならさっさと犯せばいいだろ、それとも俺を人質にするつもり? 俺がサクラーティの隠し子だって、どうせもう知ってるんだろ……!」
子どものように癇癪を起して怒鳴るネロの頭に指を伸ばせば、「触るな!」と拒まれる。それでもルカの機嫌は損なわれなかった。
「ああ、知っているとも」
平然とそう言い放ち、ベッドの縁に腰かける。
「……ミラノに行ってきたんだ。お前の親父に会いにな」
ネロの瞳が一瞬、絶望に見開かれた。
それはすぐに細められ、綺麗な顔がくしゃりと歪む。
「俺をミラノに帰す手筈でも整えて来た……? 報酬は? ――祖父さんの遺産……?」
強気な瞳が、揺らぐ。そこにじわりと涙が滲んだ。
違う、とルカは言った。しかし今のネロに、その言葉は届かない。ぱっとルカから目を背けると、ますます丸く縮こまって、布団の中に隠れてしまう。小さく震えているようだ。ルカが肩のあたりに触れると、絞り出すような声で、触るな、と言う。
「俺は祖父さんの遺産なんか知らない……知らない……」
「落ち着け。聞け、ネロ」
「俺は何も知らない……!」
完全に殻に籠ってしまったネロに、ルカは溜め息を吐いた。トラウマか何かを抉ってしまったか。元気になったかと思えばこれだ、感情の起伏が激しい、気まぐれに過ぎる。
それに振り回されるのを、楽しく思う。
「……で、シャワーはどうする?」
丸い布団に向かって声をかけてみた。
長い長い、沈黙の後。
「…………浴びる」
ネロはもぞもぞと出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!