6. 傘に隠れて(1)

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 言葉通り、ルカは昼食の時間に部屋に戻った。ベッドの上ではネロが膝を抱えて、顔を上げない。ルカが持って来た昼食を置いてベッドの縁に腰かけても、ぴくりと肩を震わせただけで何も言わなかった。  湿っぽい空気に、ルカは察する。泣いていたのだろう、と。  無防備な黒髪を一つ掬っても、反応は無い。 「何が悲しい?」 「…………」  返答は沈黙だった。  ネロは感情の起伏が激しい。拒むも諦めて受け入れるも、悲しむのも、心に蓋をしたように黙りこくるのも、全て曝け出して怒るのも、その時の彼の気分次第だ。その変化が何をトリガーとしているのか、ルカには分からない。  分かるのは、ネロが束縛を嫌い、そして孤独を恐れていること。 「どこか行きたい場所はあるか?」  掬った彼の黒髪を弄りながら、ルカは言った。慰め方など知らないから、今の状況でネロが望むであろうことを口にしてみただけだった。今日は生憎の雨。出掛けるには、向かない日和ではあるが。  ネロはゆっくりと、顔を上げた。
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