キク十三歳夏

3/11
前へ
/71ページ
次へ
 そしてピッチャーが大きく振りかぶっての二球目。読み通りの内角ストレート。  予感的中。なのに真っすぐの線が書けない不器用な俺は、真っすぐにバットを振ることもできなかった。  背中から聴こえる音が鼓膜を揺らす。  これで追い込まれたのだ。ツーストライク、ノーボール、追い込まれた三球目。  やけくその俺は適当にバットを振り、適当にボールはバットに当たる。  そして適当にふわふわとフライが上がり、それは追い風に乗り、適当にフェンスを越える。適当に言えばホームランってやつである。  結局これが決勝点となり、守り抜いた俺たちは地区大会優勝。県大会へと駒を進める。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加