キク十三歳夏

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 小学生の思考なんて単純なもので俺はその日からヒーローだった。  誰からもちやほやされて、天狗になり自惚れに自惚れ調子に乗った俺はある日タブーを犯してしまった。それは俺の学年全てを敵に廻すタブーだ。  それをしてしまったがために、クラスメイト全員が俺とは、口を聞いてくれなくなった。サオリを除いて。  何をしでかしてしまったのかと言えば、その日クラス全員の前で担任にサオリが受けている虐めの実態を、事細かに実名付きで打ち明けたのだ。  ずっとそれを見続けながら、何もしない自分がもどかしくて、やるせなかったから。きっとこの時の俺は正義を振りかざし、自分が正義のヒーローとでも思っていたのであろう。  結局、その件をあっさりと握り潰したクラス担任。  小学生の話に耳を貸さない大人。そんな不自由が許せなくて、突発的衝動にかられた俺は、ホームランを打ったあの幸運の金属バットを握りしめる。  バットを上手くボールに当てれない俺でも、担任の後頭部をかち割るのは簡単だった。  鈍い音の後、瞬く間に広がる血の海。  人生に三度しか訪れない貴重な一回は、こうして無残な形で幕を降ろした。
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