キク十三歳夏

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 雨池公園を越え、住宅街を抜け、見えてくる我らが名古屋市立森本中学校。  無駄にぶっ飛ばして来たので、珍しく遅刻ではなかった。  自転車での通学は原則では認められていないが、広い学区内、不審者による被害が後を絶たないご時世、市内じゃ田舎な我が学校で厳しく咎められることはない。  駐輪場にサオリのママチャリをビップに停車。暗黙の了解なのか俺もサオリもお互いがお互い学校じゃあまり干渉しない。  弱すぎる俺は、以前俺がやった担任を金属バットで殴ってしまった事実を、どこかでアケミのせいにしていた。 『お前のせいで取り返しの付かないことをしてしまった』  まだお互いそのことを気にしているのかもしれない。  渡り廊下でクラスメイトのトモヤとすれ違う。 「おおっ、キクが遅刻しないなんて珍しいじゃん」  小学校では誰も口を聞いてくれなくなったが、幸いにして中学では新たな仲間ができた。悪い仲間たちが。
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