キク十三歳夏

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 新しい社会を手に入れたのは、俺だけではない。  一限目が終わり、休み時間に教室へ行くと、サオリが他の女子と机を寄せ合って話している。村上チヅル。成績優秀で面倒見も良いクラス指折りの美人だ。  小学生の時から女子全員に拒絶されたサオリにも、ようやく友人ができたことにほっとする俺は、いったいサオリの何にあたるのであろうか。余計な世話である。  それにしても素行の悪いサオリと優等生の村上チヅル。一体二人を何が繋いでいるのかは、さっぱりわからない。 「あっキクくんおはよう」  二限目からの重役出勤、ふいに村上チヅルから声をかけられる。  クラスの誰にだって優しい村上チヅルは、俺みたいな屑にだって優しい。だからきっと分け隔てなく優しい村上チヅルにサオリが甘えているに違いない。そんな村上と俺はの間に割り込んでくるサオリ。 「今朝花火する約束したもんね。ちづちゃんテニス部の練習朝からあるから、明後日の土曜日にしよう」  俺の予定なんて聞くつもりない相変わらずなサオリ。勝手に約束したことにされた俺は黙ってしまう。 「えっと……俺も誰か誘えばいいのか? トモヤとか」 「だめ。ちづちゃんがトモヤくん怖いって」 「じゃあ三人?」 「おうよ」  偉そうに胸を叩きながら、スカートの裾を翻すサオリ。隣でにこにこ頷く村上。俺にサオリに優等生の村上チヅル。  得体のしれない顔合わせに、不安を隠せない俺。  昔から人付き合いが下手くそだった。今や虚勢を張って、なんとか毎日をやり過ごしている。考えすぎて言葉に詰まる俺。久しぶりに顔を出す根暗な自分。  サオリといる時は楽でいい。  俺が何も話さなくたって、一人で勝手に喋っているのだから。  
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