キク十四歳秋

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 なんとなくコウちゃんを見たら、絵が描きたくなって、家に帰ってからノートに、昔よく描いたアニメのキャラをあれこれ思い出しながら殴り描く。アニメや漫画のキラキラした瞳の描き方は、コウちゃんが教えてくたんだ。  俺もまだまだ捨てた物ではない。我ながら中々の出来だ。ぶきっちょだった利き手は、まだコウちゃんと過ごした時間を覚えているのだ。 ぴんぽーん ぴんぽーん。  一心不乱にペンを握り、キラキラした目んたまのキャラクターに、命を吹き込む十六時、俺んちのインターホンは、二度ベルを鳴らした。 「キクぅー、サオリちゃん来てるわよー」  一階玄関から呼ぶ母親の声。その声にビクッと驚く俺。傑作の予感が過ぎっていた一枚は、無残に失敗。屑籠に捨てる。  あいつはいつもそうだ。アポ無しで人んちに面倒を運んでくる。
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