キク十四歳秋

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 俺には、彼女の村上がいる。そしてサオリは村上の親友だ。なのに親友の男の家に平気で遊びにくるサオリ。このチグハグな気まずさが、あいつはわかっちゃいない。  俺の母親に通されると、いつも通り勝手に入って、勝手に部屋の襖を開け、勝手に俺のベッドに腰掛ける。 「もう、信じられない」  不機嫌に頬を膨らますサオリ。信じられないのは、あなたですよ-。  キャミソールの上にカットソーを羽織った水商売風味な出で立ちが、年齢を不詳にさせる。無論同じ中学生である。  玩具みたいな、ちゃちなデザインのサングラスを外し、溜め息を一つ。眉間にしわを寄せたまま、やはり勝手に俺のゲームラックを漁りだす。 「パワプロなら、ゲーム機に入ったままだよ」 「喉渇いた。フルーツオレある?」 「ねぇよ」  俺の声が聞こえているのか、いないのか無言でゲーム機の電源を入れるサオリ。対戦するのかと思えば、勝手に一人でペナントレースに挑みだす。
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