キク十四歳秋

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 そう、俺はずっとクラスの中でも日陰者のコウちゃんと、一緒にいるのが恥ずかしかった。  数年ぶりのコウちゃんちの離れは、前と少し変わっていて、それでも変わらない柔らかな時間が流れている。  この空間はなぜだか妙に落ち着く。なあ、コウちゃん? 今の俺を見てどう思う? そんな口にできない疑問を、知ってか知らずかコウちゃんは、言葉を選び、ゆっくりと核心に迫る。 「無理しているでしょ」  わかっていた。親友を捨ててまで手にした新しい空は、決して穏やかな物なんかじゃないって。自由を渇望して、またそれに縛られる。度々突風に吹き飛ばされ、知らなきゃよかったことを知り、そしていつしかそれを受け入れてしまう。 「まあな」   コウちゃんは、今更後戻りはできないんでしょ? と付け加え、それに俺は、どうかな? と応じる。 「たまには会いに来てよ」 「いやちょくちょく来るって」 「待ってるからさ」  ずっと俺のことを見ていたコウちゃん。なのに薄情な俺は忘れていた。いったい俺は何になりたくて、今に至るのであろうか? 気がつけば、辺りは先の見えない暗闇ばかり。  缶に残ったコーンを振って口に入れ、俺は立ち上がる。 「また、来いよな」     
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