キク十五歳冬

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 中学三年の十二月。その日は雪が降っていた。 「サオリちゃんと同じ高校いくんでしょ」 「公立高校で、他に近くて俺でも入れる高校ないでしょ」  俺の上に跨がり、髪を撫でる村上の掌。その優しい手の動きとは裏腹に、顔は不機嫌そうだった。  俺なんかと交際を始めて成績をいくらか落とした村上だが、それでも学年で三十番以内で、底辺の俺から言わせれば、雲の上の存在であった。そして俺はいくらか村上のお陰で成績を伸ばしたのだ。  村上は二年前よりも幾分慣れた手つきで、俺のズボンのファスナーを下ろす。きっとこのファスナーを隔てた向こう側に、俺の本性がいる。 「勉強しないからだよ」  黙れ黙れとお口にファスナー。このままじゃ萎えるだろっと、ヒステリックな動悸に唇で救心。これで目を瞑ったら俺の勝ち。
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