キク十五歳冬

4/18
前へ
/71ページ
次へ
 取り繕う暇もなく、俺をこの部屋に置いて行ってしまう。 「めんどくさ」 「どうしてくれるの」  村上に罵声を浴びせられ涙目のサオリ。全くもって俺の台詞である。どのみち近頃サオリと村上は、さほど仲も良くない。本当に仲が良さそうだったのは、一年の時、まだ俺が村上と付き合うまでのことだ。  つまりサオリは孤独なままだったのである。気がつけばサオリの周りは男ばかり。女どもはそれにまた嫌悪しサオリを拒絶していた。陰で『尻軽女』と呼ばれているその詳しい実態を俺は知らない。 「ねえ、そもそもなんで俺を村上に紹介したわけ?」  窓を少しだけ開けて、煙草に火を点ける。身体に染み渡るニコチンやタール。俺の問いにサオリは答えずさめざめと泣いた。傷つき泣き崩れた彼女は綺麗であった。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加