キク十五歳冬

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 最近じゃ、ちんぷんかんぷんな授業も、一応出席するようになった。いろんなやつと話すようになった。よく笑うようになったと村上は言う。そんな村上が俺に勉強を教えてくれたので、なんとか俺は高校へ進学することが出来そうだ。  放課後、学校の帰り道、俺はコウちゃんの家に立ち寄った俺は、今日もインターホンを鳴らせずにいる。  暫く悩み、迷い、やはり立ち去ろうとしたところで、コウちゃんの母親であるおばさんが出てきて、俺を中へ招き入れた。  自室にいたコウちゃんの目は透き通っていて、笑顔で俺を出迎える。ベッドから身体を起こしながら。 「キク、久しぶり。どうしたのさ?」 「ちょっとさ、帰りに暇だったからな。なあ、篭りっぱなしだと、体に悪そうだからさ、散歩いかねえか?」  そんな俺の言葉に、察しのいいコウちゃんは、「上着取ってよ」と頼んできたので、クローゼットの中から一番上等で暖かそうなダウンジャケットを選び、羽織らせてやる。
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