キク十五歳冬

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 今年の夏休み、コウちゃんは歩道橋から落ち、運悪く通り掛かった軽自動車に撥ねられた。幸いにして命に別条はなかったものの、暫く絶対安静だった為、九月と十月は学校に来ることさえ出来なかった。今だってまだ歩くことさえ出来ずにいる。  コウちゃんは自分の不注意と言い張り、決して歩道橋から落ちた本当の理由を言おうとはしなかった。  コウちゃんは俺の問いに応じようとはしなかったが、何よりもそれが答えだった。コウちゃんは両親の意向により、もう一年中学三年を繰り返さなくてはならない。卒業することができないのだ。 「ごめんな。俺の所為だな。俺の所為なんだな」 「何言ってるのさ。違うよキク。キクには関係がない」  俺は去年から再びちょくちょくコウちゃんと交友を持つようになった。文化祭、体育大会、その他の行事ごとにも僅かではあるが、顔を出すようになった。それは当時の俺からしたら信じられないようなことであった。
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