キク十五歳冬

8/18
前へ
/71ページ
次へ
 それが気に入らないトモヤは、きっとコウちゃんに目を付けていた。  夏のあの日からずっと俺は、コウちゃんの一件はトモヤの差し金なのだと確信する自分と、トモヤを信じたい自分がいた。中学生活の殆どをトモヤと過ごしてきたのだ。俺がここまでになれたのも、トモヤのお陰でトモヤは良き俺たちのリーダーであった。  俺はその夏から、本当にトモヤの周囲に、気付かれないよう慎重に、まことしやかにことを進めた。  最初に声を掛けたのは、トモヤの派閥に属さず、尚且つ俺の腕っ節に惚れ込んでいる郷田とその取り巻き。川向こうに住む何人かの荒くれた悪ガキを味方に付けることに成功する。  トモヤとことを構えるための準備である。  この森本中を始め、近隣の中学に名を轟かす、俺たちの学年の頂点に、上り詰めたトモヤ。  まず圧倒的な数を誇るトモヤの派閥の構成人数。人の心の隙間に取り入るのが上手いあいつには、カリスマ性もあり真っ向から攻めても、その拳はトモヤに届くことなく終わることであろう。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加