キク十五歳冬

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 俺は自分が取り入れられるだけの戦力を掻き集めた。郷田は年下なんかの面倒見がよく、学童保育で一緒だった団地の後輩なんかを取り入れた。トモヤに与する者の中にも、不満を持っている者、野心を抱いている者などを言葉巧みに取り入れる。  これで少しは戦争ができる。  次に問題なのはトモヤ本人の腕っ節。不良の上の方ってのは、大概幼い頃に何かをやっていて、常人では考えられないほどの筋力や瞬発性に加えて、何度もこなした修羅場鉄火場の数が、彼を怪物に変えた。  しかしながら、これを言わせて貰えば、俺だって伊達に今日まで肩で風を切りながら、ここで過ごしてきたわけではない。ステゴロで負けるつもりなどさらさらない。  そして、最後にして最大の難関が待ち受けているのではあるが、さてさて、俺がコウちゃんの顔を見ることによって、それを準備する前に、賽は投げられてしまったのだ。  俺はコウちゃんを家まで送り、別れ際の挨拶をする。 「ばいばい。コウちゃん」  俺は飛び切りの笑顔で、そう言った。
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