キク十五歳冬

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 同日、深夜零時。  心臓を圧迫するキックの音が流れるフロア、隣町の雑居ビルの地下にテナントする、中学生が出入りなんかできる場末のクラブ。トモヤのグループの溜まり場である。トモヤはいない。やつは必ず年上のタチの悪いOBが来る前に帰るからだ。 「見つけたぞ! おらぁ、一人残らずやっちまえ」  俺の号令と共に、めざし帽を被った数人が、店内で暴れる。鉄パイプを持った俺の寄せ集めた兵隊たちが、トモヤの取り巻きに天誅を下していく。  無関係のやつもいたのだと思う。怯える女連中の腕を掴み、ひっぱり、盗みの巧い郷田の後輩がくすねたハイエースに無理やり乗せる。兵隊には褒美が必要である。  店内のグラスと言うグラスを叩き割る。トモヤの取り巻きの何人かは、頭をかち割られ、倒れている、もしかした死んだかもしれない。確認している暇はない。警察がくる。  阿鼻叫喚の地獄絵図となったクラブのレジから、奪えるだけの金を奪って、逃走する俺たち。まだ捕まるわけにはいかない。
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