キク十五歳冬

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 トモヤがヤサにしていたのは、年上の鳶職をしている先輩のアパートだった。  オンボロアパートを、鉄パイプをもって包囲するクソガキどもの群れは、どう見ても壮観であった。その数およそ三十。  いよいよ観念して、アパートから出てきたトモヤの目は、怒気に満ちた呪う様な目だった。 「キクぅー。お前いよいよ、調子に乗って、来るところまで、来ちまったんだな」  この時、この目、この声に、俺は長年連れ添った悪友を失うことを理解する。 「俺のバックにはさ、広田くんがいるのを知ってんだろ?」  そう。これが対トモヤとの、最大の脅威。  広田三兄弟。この街で尖って生きるなら、この広田三兄弟は避けて通れない暗黙のルール。
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