キク十五歳冬

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 トモヤは広田の幼馴染で昔から可愛がられている。 「知ってるよ。でもな。残念だけれどさ……」  その時、悪ガキ三十人の人だかりが割れる。その最後尾から、ノソノソと一人の男が現れる。この田舎街の頂点に立つ広田である。 「俺のバックにも、広田くんいるんだわ」  タバコを咥えようとした広田に、俺は自前のオイルライターで火を点ける。 「ってことなんだ。悪いなトモヤ」  悪びれるわけでもなく上機嫌に言う広田。そして広田の傍に肩を抱かれるようにしてくっついているのは、他の誰でもない。サオリである。 「あっくん。すご~い。サオリね、強い男って好き~」  俺は、俺は、俺は、サオリを使って、広田に取り入ったのだ。
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