キク十五歳冬

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「まあ、トモヤ。別に俺はキクにつくってわけじゃねぇ。お前は俺の可愛い弟みたいなものだからな。可愛い後輩同士のいざこざに俺は関与しないってだけだ」  何が可愛い後輩だ。散々俺を大人数でボコボコにしてきたくせに。何が可愛い弟だ。トモヤはこんな人数に囲まれて、もう息をすることさえ苦しい筈なのに。こちらの裸の大将の言葉に腹が立ち、敵であるトモヤに同情さえする。  全てを諦めて、意を決するトモヤ。 「キク。最初からお前のこと気にいらなかったんだ」 「ああ、俺もさ」  三年にも満たない儚い友情であった。  トモヤは長い髪の毛を後ろにくくると、俺に一歩一歩ノーガードで近づいてくる。
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